DXに必要なデジタル人材の育成とシステムの内製化
2020年12月に公表されたDXレポート2によれば、DXの実施が未着手もしくは一部部門にとどまる日本企業は全体の約95%。部門横断的あるいは持続的に実施している企業が5%。ほとんどの企業はDXを本格的には進められていないことになる。
一方で、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う環境変化により、ITを活用したビジネスプロセスの変革や業務効率化への対応が急務となっている。
これまで企業のIT投資は、基幹システムやインフラ基盤の整備が中心であった。そのため、集計・報告や各種申請、台帳管理など、各部署固有の業務はIT化が遅れ、非効率な作業が多く残っている。こうしたなか、各部署自らITを活用して、業務効率や労働生産性を改善する動きが進んでいるのだ。
そして、システムの内製化を進める上で重要になるのが、デジタル人材の育成である。ある調査によれば、ビジネスパーソンの約70%がデジタル技術を習得する必要性を感じていて、そのうちの約6割がビジネスでの活用が必要になると考えているという。
では、なぜデジタル技術の習得が進まないのか。そこには「学ぶべき専門知識が多すぎる」「プログラミング言語がわからない」など、いくつかのハードルがあると考えられる。
プログラミングは難しくない
デジタル人材を育成するにも、AIやIoTなど、最新のITをすべて習得するのは困難である。では、まず何を学べばよいか。それはズバり「プログラミング」と「データベース」である。例えば、FacebookやLINEなどのSNS、Googleの検索エンジン、Sansanのような名刺管理アプリ、これらはプログラミングとデータベースによって作られている。また、企業の会計システムや人事給与システム、そしてAIもプログラミングとデータベースで作られている。
プログラミングするには、専門的なプログラミング言語やツールを習得しなくてはならないと考える人も多いだろう。しかし最近は、小学校でのプログラミング教育義務化の影響もあり、ビジュアル・プログラミング・ツールが流行っている。
その代表が「Scratch(スクラッチ)」だ。では、Scratchを使って簡単にプログラミングのポイントを解説した動画を見てみよう。
このように、ビジュアル・プログラミングなら、専門的なプログラミング言語を覚えなくても、パズルのようにブロックを組み合わせるだけでプログラミングができるのだ。
昨今、こうしたビジュアル・プログラミングのツールを使った「ノーコード開発・ローコード開発」が注目され、ITエンジニアではなく一般のビジネスパーソンによるシステムの内製化が進んでいる。
「ノーコード開発・ローコード開発」とは?
ノーコード開発とは、プログラミングのコードを書かずにシステムを作ること。ローコード開発とは、少しだけプログラミングをしてシステムを作ること。では、なぜ「ノーコード開発・ローコード開発」が注目されているのか、その背景を動画で見てみよう。
全社で利用する販売管理システムや会計システムは、全社共通の業務を効率化するが、各部署や各個人の業務までは効率化できない。さらに、ITエンジニアではなく、業務を熟知している担当者が自らアプリを開発すれば、これまでIT化できていなかった業務を効率化できる。そして効率化することで空いた時間を使えば、新しい発想も生まれるだろう。
ノーコード開発でアプリを作る
個々の業務の効率化にExcelを活用するケースは多い。しかしExcelには、共有しにくくファイルが乱立しがち、データの収集・分析が難しいといった欠点がある。そのために、ファイルを収集する手間が発生したり、ファイル集計時に転記・入力ミスが発生したり、過去データが散乱して最新版を探すのが大変だったりする。さらに、ファイルの破損や大量データによる動作遅延が発生するなど、課題も多い。
これらを解決し、簡単にExcel作業をアプリ化できるのが「ノーコード開発・ローコード開発」だ。次の動画では、Excelファイルをすぐにアプリに変換できるノーコード開発・ローコード開発ツール「CELF(セルフ)」を使って、アプリを作る様子を見てみよう。
このように、とても簡単にアプリが作れて、データ集計の手間は不要になる。
CELFはExcelとの親和性が高く、直感的な操作で開発の結果がすぐに反映される。一般のビジネスパーソンでも、すでに利用しているExcelテンプレートを読み込ませるだけで、あっという間に「業務アプリ化」できるのだ。
ローコード開発でアプリをパワーアップ
ノーコード開発は非常に簡単だが、できることも限られている。例えば、アプリに申請・承認のワークフローを組み込んだり、独自の帳票を出力したり、もっと便利に利用ができるように手を加えるにはローコード開発が必要になる。
CELFでは、少しのコードを書くだけで、ローコード開発も可能だ。次の動画で、先ほどノーコード開発で作成したアプリをローコード開発でパワーアップさせる様子を見てみよう。
このように、ローコード開発では用意された部品を組み合わせるだけで、さまざまな機能を作成できる。急に、「売上動向データを出してくれ」「売上予測のデータがほしい」と言われても、慌てることはなくなる。事前に、迅速に対応できる機能を用意しておけばいいのだ。
各部署や各個人が、CELFのようなノーコード開発・ローコード開発ツールを活用することで、新しい可能性が見えてくるはずだ。
これからのシステム内製化の主役はITエンジニアではなく一般のビジネスパーソンだ。ビジネスパーソンがノーコード開発・ローコード開発を学べば、デジタル人材の確保とシステム内製化が一気に進む。こうした人材育成こそがDX推進のカギとなるのだろう。