「ITに弱くて…」は、もうビジネスで通用しない
無償のIT基礎講座で、AIやロボットを使いこなす側に

無償のIT基礎講座で、AIやロボットを使いこなす側に
ビジネスパーソンの必須能力として、英語力やコミュニケーション能力などがしばしば挙げられる。だが、最も重要な能力は実は、「ITスキル」なのではないだろうか。未来の企業ではAIやロボットを管理する仕事の重要性が増し、ITの知識なしでは仕事ができないと予想されるからだ。そうした中、SCSKでは社会人向けにIT基礎講座の無償提供を開始した。その狙いは何か。そして、ITを学ぶことで、ビジネスパーソンや企業にどのようなメリットがもたらされるのか。担当者に聞いた。

ITスキルは今や最優先で学ぶべきもの

──ITが生活に浸透するスピードはすさまじいですね。

岡田:そうですね。初代のiPhoneが登場したのは2007年。それからたったの10年あまりで、スマートフォンは生活に欠かせない存在になりました。

岡本:電話が発明されてから5億人の利用者を獲得するまで、約50年かかったと言われます。ところが、YouTubeのユーザー数が5億人に達したのは登場から5年後。Facebookは3年、Twitterは2年でした。技術が広がるスピードは、以前に比べると明らかに速くなっています。

岡田:今後もこの流れは変わらないでしょう。Amazon.comが運営するコンビニ「Amazon Go」では、AIや画像処理技術などを駆使し、レジを通さずに会計が済む仕組みを導入しています。近い将来には、自動運転やドローンによる配送などが実現するはず。ITによって、私たちの暮らしは劇的に変わっているのです。

──企業の側も、そうした動きに対応しなければなりませんね。

岡田:はい。何らかの形でITを取り入れたサービスは増えるでしょうし、ITを使って業務効率化を図らなければ他社との競争に勝ち抜くことも難しくなるはずです。また、人手不足などで働き方改革が求められている日本では、ITによる省力化が急務です。

──こうした流れに伴って、ビジネスパーソンに求められるスキルは変わるのでしょうか?

岡田:当然、変わると思います。よく、「未来のビジネスパーソンに求められるスキル」として、英語力やコミュニケーション力などが挙げられますが、ITスキルはそれ以上に、社会人にとって重要なスキルとなるでしょう。なぜなら、一般のビジネスパーソンとITとの関わりが急速に増えているからです。

──IT化が進む中、より多くのエンジニアが必要になるというのはわかります。でも、一般のビジネスパーソンもITと触れ合う機会が増えるのですか?

岡本:そうだと思います。キーワードは「RPA(Robotic Process Automation)」。現在の企業には、「自動化できる業務」がたくさん残されています。例えば、一般社員が手書きの経費精算伝票を提出し、各部門の担当者がExcelファイルに入力。さらに、会計部門の担当者がそのデータを会計システムに転記するという流れで処理する企業は今も珍しくありません。しかしRPAを導入すれば、一般社員が入力した経費のデータをそのまま自動処理することが可能となり、人が担う工数を劇的に減らせます。

──でも、RPAを主導するのは一般社員ではなくエンジニアではないのですか?

岡田:現在の日本ではIT人材が圧倒的に足りません。2020年時点で29万人、2030年には59万人のエンジニアが不足するといわれています。基幹システムのように複雑で重要なシステムなら、社内エンジニアや外部のベンダーに開発を任せることになるかもしれません。でも予算などの兼ね合いで、部門内の局所的なシステムまでは手が回らない企業が多いでしょう。そのためエンジニアではない一般社員が、自ら手を動かしてRPAの導入に取り組むケースは増えていく。私たちは、そう予測しています。

SCSK 流通・メディアシステム事業部門 流通・メディア第四事業本部
データサービス第一部 副部長 岡田 一志

ITを学んで「AIやロボットを使いこなす側」になる

──今後のビジネスパーソンは、ITスキルの有無で評価が大きく左右されそうですね。しかし、RPAを進めて仕事が自動化されると、それまで自分が担当していた仕事がなくなってしまうわけですよね?

岡田:それは違います。もちろん、AIやロボットなどITの進化によって一部の仕事はなくなります。ただ、人に感動的な体験を提供するような仕事やクリエイティブな仕事は、今後もおそらく自動化できません。また、AIやロボットによってなくなる仕事もある代わりに、AIやロボットを管理し使いこなす仕事が新たに生まれるはずです。つまり、ITを使いこなすスキルや、ITにできることとできないことを見極める目があれば、「ITに淘汰される側」ではなく「ITを使いこなせる側」として働けるのです。

──なるほど。もし、ITスキルを磨いて「AIやロボットを使いこなせる側」になると、そのビジネスパーソンにはどんな利点があるのでしょうか?

岡田:最大の利点は、付加価値の低い業務から解放され、その分の時間をクリエイティブな仕事に振り分けられることだと思います。プログラミングができれば、「毎週提出する決まりきった内容の報告書をロボットに下書きさせる」など、ルーティンワークをITに任せることができます。そして人間にしかできない仕事に没頭すれば、大きな成果を上げて評価は高まるでしょう。また、仕事の経験値を上げて自らの価値を伸ばすことも可能になるはずです。

──一方、企業にはどんなメリットがあるでしょうか?

岡田:まず挙げられるのは、IT人材を育成できる点です。既に述べたように日本ではIT人材が不足しています。ビジネスの拡大には、外部ベンダーに依存せず、自社でIT人材を育成する必要があるのです。もう1つのメリットは、ITスキルにとどまらず、「社員のビジネス基礎力」全般を底上げできることです。

──それはどういう意味ですか?

岡本:人に指示を出す場合、「適当に進めておいて」と伝えても良い結果が出てしまうことがあります。でも、コンピューター相手ではそうはいきません。コンピューターに命令する(=プログラミングする)際には、正しい処理の順番を組み立て、正確な言葉を使ってロジカルに指示を出す必要があります。つまりプログラミングを学ぶと、業務を分解する能力、厳密かつロジカルに考える力などが自然と身につきます。これは、社員のビジネス力アップに大いに役立つのではないでしょうか。

SCSK 流通・メディアシステム事業部門 流通・メディア第四事業本部
データサービス第一部 CELF・Curlプロダクト課 岡本 奈緒

「プログラミング」のハードルは意外なほど低い!

──SCSKは2019年10月から、オンラインで学べる無料講座「1人でゼロからはじめられる!社会人のためのIT基礎講座」を開講するそうですね。それはどのような内容なのでしょうか?

岡本:講座は、「プログラミングの基礎」「RPA」「データベース」の3本柱で構成されています。まずは、プログラミングの基本について、実際のプログラムを作りながら学んでいきます。続いては、ビジネスパーソンの皆さんにとって最も関心が高いと思われる「RPA」について学習。RPAでできることや得意な業務を説明した後、具体的な業務を自動化するプログラムを自力で書きます。そして、AIやIoTなどを活用するために欠かせないデータベースの考え方、管理方法について学ぶという流れです。

──講座名には「1人でゼロからはじめられる」とありますが、プログラミングと聞いただけで尻込みする人がいるかもしれません。本当に、初心者でも大丈夫でしょうか?

岡本:はい、大丈夫です。プログラミングと聞くと、「画面に向かって呪文のような『プログラミング言語』を打ち込む」というイメージを抱く人も多いでしょう。しかし今のプログラミングは、ずっと敷居が低いのです。講座は、SCSKが提供するサービス「CELF(セルフ)」を使って行われます。CELFは、子ども用おもちゃの「ブロック」に似ています。さまざまな機能を持ったパーツをつなぎ合わせることで、望み通りのアプリを組み立てられるのです。ITに対してアレルギーがある人も、気軽にチャレンジできるのではないかと思います。

──学習はどのような形で行うのですか?

岡本:学習用サイトにログインすると、学習用動画アプリが再生できるようになっています。動画とテキストを見ながら、基礎的な考え方を学び、CELFを使ってアプリを実際につくってみるというのが基本的な流れです。学習用動画アプリにはメモ機能などがあるため、勉強の進み具合や疑問点などが一目でわかります。また、特別な環境を用意するなどの手間がなく、学習もアプリの制作もできるのです。

IT講座学習用アプリ(左)とWebアプリ開発ツール(右)のイメージ

IT基礎講座によって現場で働く人々を支えたい

──なぜSCSKは、コストをかけて無償のIT講座を提供するのでしょうか? 

岡田:一般的なIT講座には、エンジニアを目指す人や子ども向けの講座が多く、一般のビジネスパーソンが学べるものが少ないことに気づき、企画を進めました。狙いの1つは、まだ認知度が低いCELFを知ってほしいのです。無料講座によってIT初心者の方に関心度を高めてもらい、いずれCELFのユーザーになっていただければと考えています。もう1つの狙いは、格好良く言えば「社会貢献」です。IT基礎講座によって、日本のビジネスを底上げできればと考えているのです。

──もう少し詳しく説明していただけますか?

岡田:一昔前の企業ではExcelが使えると珍しがられましたが、今は多くの人が当たり前のようにExcelを使っています。RPAも、いずれはそうなるはずです。あと何年かたつと、普通のビジネスパーソンが日常的に、自分の仕事を自動化する時代がくるでしょう。そうなれば、日本全体の生産性は上がるでしょうし、労働時間が短くなって日本人全員の幸福度アップに貢献できるかもしれません。

──1人でも多くのビジネスパーソンがIT基礎講座を受け、自らの価値を高めていただけるといいですね。

岡田:そうですね。ただ私たちは、個人の受講生だけでなく、会社、あるいは組織単位で受講するところが増えてほしいと願っています。

──それはなぜでしょうか?

岡田:多くのビジネスパーソンは、ITを使えば仕事が効率化できることを何となく知っています。でも、目の前の仕事や日常生活に追われ、ITスキルの向上に費やす時間を確保できていません。その結果、スキルアップもRPAなどによる業務効率化も後回しになってしまう。これではいつまでたっても業務を自動化できません。実にもったいないと思うのです。ここが企業にとって、一種の「分岐点」なのです。業務時間を使って社員にIT講座を受けさせれば、短期的には仕事が滞るなどのデメリットが生じるかもしれません。でも、RPAを自力で進められるスキルを身につけさせれば、長期的には業務効率が高まり、大きなプラスをもたらします。ぜひ、組織としての取り組みを期待したいですね。

──最後に、IT基礎講座に興味を持っている方々にひと言お願いします。

岡田:私たちはSIerとして、いろいろなお客さまの困りごとを解決しています。その中で日々痛感しているのが、現場の皆様が目の前のお仕事に追われている現状です。ITのスキル・知識があれば、日常業務はグッと楽になります。そこでぜひ、SCSKのIT基礎講座CELFでパワーアップしていただきたい。そうして日本の働き方改革が一歩でも進んだり、多くの人がルーティンワークから解放されて付加価値の高い仕事に打ち込めたりできたら、私たちもうれしく思います。