ユーザー体験を徹底追及した、次世代の超寿命クラウドERPとは
ベンダー視点からユーザー視点への変貌は顧客に何をもたらすか

ベンダー視点からユーザー視点への変貌は顧客に何をもたらすか
「モノ」から「コト」へと顧客ニーズは変化している。この変化に伴って、企業活動の基幹を支えるERPにもUXデザインの観点が求められるようになってきた。国産初のERPとして28年間、6,300社の導入実績を持つ「ProActive」もまた、ユーザー視点に向き合ったことで、超寿命クラウドERP「ProActive C4」として生まれ変わった。その開発はどのように進められたのか。その結果、UI/UXはどのように変わったのだろうか。

なぜ、UXデザインを重視したのか

スマートフォンの普及以降、顧客ニーズは所有する価値である「モノ」から、体験から得られる価値である「コト」へと変化している。

この傾向は、一般消費者向けのアプリケーションだけではない。基幹システムやERPといったエンタープライズ領域においても、体験価値を重視するようになってきたのだ。

国産初のERPとして誕生し28年が経過したSCSKのProActiveシリーズも、UXデザイン(ユーザー体験の設計)と向き合い、超寿命クラウドERP「ProActive C4(プロアクティブ シーフォー)」として生まれ変わった。(関連記事:なぜいま、クラウドERPに投資するべきなのか

UXデザインが重視されるようになった背景には、システム利用者の多様化が影響しているという。

「ProActive C4の前バージョンの提供を始めた2005年頃、基幹システムはまだホストコンピュータが一般的でした。表示画面いっぱいに入力項目が並び、マウスは使わずにタブキーやエンターキーで入力項目を移動するのが当たり前で、その当時のユーザーからは、使いやすいと評価されていました」(SCSK ソリューション事業グループ ProActive事業本部 ビジネス推進部 部長 五月女 雅一)

しかし、旧来のシステム操作に習熟したユーザーだけでなく、スマホの操作性や価値観に慣れた世代がERPを利用するようになると、ユーザビリティへの要求が大きく変化した。

「そうしたユーザーからは、『なぜERPはこんなに使いづらいのか?』という意見が寄せられるようになり、画面設計の常識が大きく変化したと感じるようになりました」(五月女)

さらに、オンプレミス製品からクラウドサービスへの転換も、UXデザインを重視する要因となった。

オンプレミスの場合、導入時に顧客に向き合うことで、個社ごとに使いやすくなるようにカスタマイズを加えることもできた。しかしクラウドサービスでは、導入時のそうした手厚い対応は難しい。

「そのため、機能や画面の操作性の検討だけでは不十分で、顧客全般のユーザー体験に立ち戻って検討する必要があると考えるようになりました」(SCSK ソリューション事業グループ ProActive事業本部 ビジネス推進部 新規事業開発課 課長 日出 英彰)

どのような価値観を持つユーザーに、どのようにサービスを提供することが、優れた体験価値につながるのか。こうした観点からUXデザインと向き合い、ユーザー視点で開発を進めることが重要だと考えたのだ。

「開発者は、機能の開発に意識が向きがちです。その機能が使いやすいのか、そもそも使ってもらえているのか、というユーザー視点へ意識を切り替えることが必要だったのです」(日出)

製品開発者としてのベンダー視点から、サービス提供者としてのユーザー視点への変革が求められていたのだ。

「自分たちが良いと思うモノを作っても、お客さまにとって良いものとは限りません。またお客さまがどのように使いたいかを理解していなければ、使いづらいものを作ってしまいます。既存のお客さまへのヒアリング結果などから、ベンダー視点で開発を進めてしまっていたという反省がありました」(五月女)

(左から)SCSK株式会社 ソリューション事業グループ ProActive事業本部
ビジネス推進部 部長 五月女 雅一
SCSK株式会社 ソリューション事業グループ ProActive事業本部
ビジネス推進部 新規事業開発課 課長 日出 英彰
SCSK株式会社 事業革新推進グループ SE+センター SE+推進部 企画開発課 中村 公美

ユーザー視点での開発はどのように進められたか 

ユーザー視点でProActive C4のサービスをデザインするため、社内のUXスペシャリストや外部のUXデザイン専門会社がプロジェクトに参画し、ProActiveのユーザー体験を可視化するところから始めた。

「ProActiveには、営業、企画、開発、導入、保守など様々な立場のメンバーが関わっています。ユーザーと接するフェーズごとに担当が分かれているため、一連のユーザー体験として認識するのが難しい状況だったのです。まずはユーザー体験を可視化し、課題を整理する必要があると考えました」(SCSK 事業革新推進グループ SE+センター SE+推進部 企画開発課 中村 公美)

ProActiveに関わる様々な立場のメンバーを集めたUXデザインのワークショップでは、ユーザーセグメントに基づくペルソナの一連の体験を、カスタマージャーニーマップに整理した。想定したユーザーの検討段階から導入、サポートに至る一連のフェーズにおいて、顧客の行動や思考・感情、それに対するSCSKの対応など、役割の異なるメンバーが協同して、ユーザー体験の可視化を進めたのだ。

「カスタマージャーニーマップから見えてくるユーザーの要求事項や、クラウド化することでユーザーの体験が大きく変わる部分などを抽出し、重要なUX要求として整理しました。その上で、要求を満たすための課題、解決に向けた具体的なアイデアなどを検討し、プロジェクトメンバーにフィードバックしました」(中村)

特に課題として上がったのは、営業、導入、保守とフェーズごとに担当を設けていたため、ユーザーの要求事項を体系的に管理できていなかったことだ。

「お客さまとのやり取りはフェーズごとに記録していましたが、それが関係者全員に共有されていなかったのです」(五月女)

ProActiveを支える多くのメンバーが、立場や役割を超えてUXデザインに向き合ったことで、一連のユーザー体験を可視化できたのだ。

UIデザイン(画面設計)についても課題があった。これまで顧客の要望に手厚く対応し、細かな改良を繰り返した結果、画面操作に一貫性がなかったり、機能追加が使いづらさにつながったりと、ユーザビリティに関する課題が山積していたのだ。

ProActiveには3,000以上の機能があり、画面数は4,000を超える。その中から、代表的な32の機能パターンについて、徹底的にユーザビリティ評価を実施し、画面設計の課題を整理した。

「代表的な機能パターンを評価することで、多くの画面に共通するユーザビリティ課題が見えてきました。その解決策を整理し、UI標準のガイドラインとして取りまとめました」(中村)

UI標準ガイドラインは、開発者が守るべき設計上のルールとしての役割だけではなく、新しいデザイン方針を浸透させる役割も果たした。

「UIデザインにルールがないと、開発者は自由に設計できてしまうので、名称が同じボタンでも処理が異なったり、同じ処理のボタンなのに画面によって配置が違ったりしてしまいます。こうした事態を避けるため、細かくUI標準を定め、開発者がそのルールを守ることによって、ユーザビリティの向上を図ったのです」(日出)

ユーザー体験の再設計により、ProActiveはどのように生まれ変わったのか

ユーザー視点でUXデザインに向き合った結果、ProActive C4のUIは大きく生まれ変わった。

ProActive C4 UI・UXの特長

「たとえば、『出張先や外出先では、タブレットやスマホで処理をしたい』というユーザー要求に対しては、マルチデバイス対応だけでは不十分です。PCとタブレットで同じように操作できることが重要だと考えました」(中村)

タブレットとPCの操作性があまりにも違うと、ユーザーが困惑してしまう。だが、タブレットにはキーボードはない。もちろん画面サイズも異なる。そうした違いがありながら、どうすればPCと同じように操作できるのか。PCとタブレットの操作方法の違いをまとめ、UIの標準化を進めた。

また、役割や立場によってユーザーごとに表示する項目やレイアウトを変更できる「画面パーソナライズ機能」も用意された。ユーザーの多様化に伴い、必要な画面項目や機能がユーザーごとに異なるためだ。

「従来は、一部のユーザーにしか必要のない項目もすべて表示していましたが、それでは大多数のユーザーにとって操作性を低下させる原因になります」(五月女)

「些細なことですが、こうしたことが業務効率の低下やユーザー満足度の低下につながっていたと思います」(中村)

さらに、ユーザー視点と向き合ったことで「スマート導入」や「スマート保守」という新たなサービスも生まれた。

「これまでの導入では、当社の技術者がお客さまのところに出向いてサポートしていました。ですがスマート導入であれば、ナビゲーション画面に従って操作することで、都合の良いタイミングで、お客さま自ら導入が進められます。また、操作の途中でわからないことが発生しても、チャットボットで質問してもらえれば、解決できるように準備しています。もちろん、必要に応じて手厚いサポートも受けられます」(五月女)

一方のスマート保守では、ウェブサイトからオンデマンドで、ユーザーの疑問や課題に迅速に対応する。さらに、基本の保守メニュー以外のサポートについても、プロフェッショナルサービスとして、様々な要望に応えていくという。

超寿命クラウドERP「ProActive C4」は、2021年11月にリリースしたばかり。そこで提供されるユーザー体験は「最先端のもの」と五月女は自信を持つ。だが、リリースして終わりではない。

「UXデザインは、継続した取組みが重要になります。ユーザー要求に向き合うことやユーザビリティの改善を繰り返し、永く使えるサービスとして成長させていきたいと思っています」(中村)

ユーザー視点に向き合う目的は改善だけではない。新しく仕組みを作ることも重要になる。

「たとえば休暇を届け出るとき、チャット上で、「何月何日、休みます」と書き込めば、自動的に休暇申請できるように、SNSやビジネスチャットと連携も進めたいですね」(日出)

「様々な情報を集約できるプラットフォームとしてProActive C4を活用してもらうため、市況の情報やイントラのトピックスなど、その企業に必要な情報をダッシュボード的に表示することも検討しています」(五月女)

UXデザインと向き合うことで変貌を遂げたProActive C4。そのユーザー体験を試してみてはいかがだろうか。