JCBはどのように、VOCを業務改善につなげたのか
VOCを業務に活かすには(前編)

VOCを業務に活かすには(前編)
現在、企業が業務を改善する上で、VOC(Voice of Customer:顧客の声)はなくてはならないものになっている。VOCの活用により、顧客満足度を高め、顧客離反を防ぎ、顧客価値を最大化できるからだ。一方で、VOCの活用は簡単ではない。仮説の立案から、VOCの収集・分析、仮説の検証まで、その作業は膨大になる。ここでは、株式会社ジェーシービーでVOCの活用に取り組む、コミュニケーション企画部に話を伺い、VOC活動の実際と分析ツールの活用方法を聞いた。

コールセンターに集まるお客様の声

──ジェーシービー様におけるコールセンターの位置付けを教えてください。

コールセンターは、お客様接点の重要な窓口と位置付けています。具体的には、電話やメールなどで寄せられる、サービス内容への質問、住所変更、クレジットカード紛失対応など、あらゆる問い合わせに答えています。

──コミュニケーション企画部はコールセンターを支援する部門と考えていいでしょうか。

そうしたミッションもありますが、お客様満足度向上に向けた企画を立て、その企画を実現し、その効果をモニタリングする役割のほうが大きいです。つまり、コールセンターを見ているというよりも、その先にいるお客様を見ています。

──VOCをどのような形で業務改善に活かしているのでしょうか。具体的に教えてください。

たとえば、お客様からコールセンターに「買った覚えのない店舗名が明細書に載っている」という声が寄せられることがあります。該当する明細書を調べたところ、海外の通販サイトでの購入記録であることがわかりました。お客様はご存知ありませんが、クレジットカードの明細書に記載されるのは、通常、加盟店の「屋号」です。そして、店舗名と屋号が異なることがあります。つまり、お客様は屋号を見て、買った覚えがないと判断していたのです。そこで、私たちは、明細書に屋号だけでなく店舗名を記載するように明細書の表記を一部改修しました。

──VOCによる業務改善提案は、コミュニケーション企画部からの発案で始まることが多いのでしょうか。それとも現場部門が調査を要望することが多いのでしょうか。

現状、半々くらいですね。ただ、提案件数としてはまだまだ少ないと思っています。お客様対応にとどまらず、VOCを業務改善や事業貢献につなげることはできないかと、現場を回ったこともあります。

左から、株式会社ジェーシービー コミュニケーション本部 コミュニケーション企画部 支援推進グループ 主務 阿部 香織 氏、副主担 澤田 ちひろ 氏

VOCを活かすには解析ツールが必須

──VOCの活用をさらに進めるため、VOC解析ツールを導入したそうですね。そもそもツール導入のきっかけは何でしたか?

手作業での集計をなくして、省力化したかったのが第一の理由です。導入以前、アンケートの配付から集計結果が出るまで約3ヵ月かかっていました。回収も集計もすべて人手をかけてやっていたからです。これでは、半期に1回くらいのペースでしか新たな施策が打てません。スピードアップのためにツールを導入したのです。

──VOCのテキスト解析には、どのようなメリットがあると思いますか。

コミュニケーションを数値化できるのが大きいですね。なかなか伝わりづらいコミュニケーターにも、数字を見せると納得するのです。たとえば、単に「あなたはこういう言葉遣いが多いよ」と言ってもあまり響きません。それが「平均は20回だけど、あなたは40回言っているよ」と言うと「直さないと……」と思ってくれます。数字で示すことにより、客観的に判断できるようになります。

──VOC解析による成功例を、どのように横展開していますか。

まずは全体朝礼で、成功例と数字のみを伝えています。その後、一人ひとりのコミュニケーターにその人に合わせた形でフィードバックします。個別に数字を見せながら説明すると、「やっぱりそうなんだ?」とか「ええ!本当?」などの反応があり、改善につながることが多いです。

IT知識ゼロでもVOC解析ツールを使えるのか

──今回の導入では、いくつかのツールを比較しましたか。

はい、5〜6製品ほど資料を取り寄せて、検討しました。別部署がすでに導入していたツールについては、頼んで試用させてもらいました。

──ではなぜ、SCSKが提供するテキスト解析ツール「VOiC Finder(ヴォイス ファインダー)」を選ばれたのでしょうか。どのような点が良かったのでしょう

コミュニケーション企画部の場合、ツールを利用するのは専任のスペシャリストではなく、私たち担当者です。人事異動等により担当者は代わるので、操作のしやすさは重要です。その点、VOiC Finderは操作しやすく、インターフェイスが極めてわかりやすいので、「何となく」で使えます。マニュアルを読み込むのは、本当にこの操作で良かったのかを確認する時くらい。研修を受けなくても使い始められます。ITの知識も不要でした。私たち自身、プログラミングや、Excelのマクロすらまったく書けなくても、導入してすぐに使えるようになりました。

左から、株式会社ジェーシービー コミュニケーション本部 コミュニケーション企画部 支援推進グループ 谷口 麻菜 氏、白峰 智大 氏

重要なのは仮説‐検証のサイクル

──コミュニケーション企画部として、VOCを業務改善に活かす上で特に注意していることはありますか。

データを集めたり、分析したりする前に、必ずテーマを決めて、仮説を立てるようにしています。仮説を立てることで、はじめて、必要なデータも分析の方向性も明確になるからです。その上で、仮説と分析結果を比較検証すれば、打つべき施策も見えてきます。これは、データを分析するためには必須だと思っています。

──VOiC Finderを使うことで、仮説検証は進めやすくなったのでしょうか。

はい、仮説を立てる上では、抽出したいテーマに合わせてキーワードを設定する「辞書」が必要になります。この辞書があらかじめ用意されていて、しかも簡単にカスタマイズできる点が非常に便利です。他社のツールでは、辞書がオープンになっていなかったり、ユーザーによるカスタマイズが難しかったりする。これが、VOiC Finderの最も大きな利点だと思っています。

 

後編では、VOiC Finder を使った具体的な業務改善とそこで求められる業務についてさらに深く聞いていきます。
(後編に続く)